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リスティング広告を利用したサービスが不競法の商品等表示に当たらないと判断された事例

東京地判平成28年4月21日

判決文(PDF)

【事案の概要】

「本件は,原告が,被告に対し,原告が行っているリスティング広告を利用した節税を目的とする金の小分け加工サービス(以下「原告サービス」という。)が商品等表示であって,被告によるリスティング広告を利用した金インゴットの精錬分割加工サービス(以下「被告サービス」という。)の提供が不正競争防止法2条1項1号(以下「1号」という。)の不正競争に当たると主張して,①同法3条1項及び2項に基づく被告サービスの提供の差止め及び広告の削除,②同法4条及び5条2項に基づく損害賠償金1980万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成27年12月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。」

 【判旨】

「原告サービスは営業方法そのものである上,原告サービスで利用されているリスティング広告は一般に用いられている広告手法の一つであり(乙9,10),原告サービスに関する広告文言(「インゴットの分割・小分け」,「小分け加工で税金対策」,「1kgバーの税金対策」,「1kgを100g-10本に小分け」等。甲3,弁論の全趣旨)はいずれも原告サービスの内容を説明したものにすぎないから,これらが自他識別機能又は出所表示機能を有するとは認められない。したがって,原告サービスが商品等表示に当たるということはできない。」

 不正競争防止法2条1項1号は混同惹起行為を「不正競争」として規制しています。

不競法2条1項1号

「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」

混同惹起行為に該当するには、①商品等表示該当性、②周知性、③類似性、④混同のおそれの要件をみたす必要があり、本事例は①商品等表示該当性が問題となりました。

「商品等表示」とは人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいいます。そのため表示を伴わないものは「商品等表示」にはあたりません。また、表示自体が自他識別機能又は出所表示機能を備えている必要があります。

本事例について、裁判所は、リスティング広告を利用したサービスは、営業方法そのものであり、リスティング広告は一般的なで、サービスに関する広告文言もサービスの内容を説明するものにすぎないから、自他識別機能又は出所表示機能を備えているとはいえず、「商品等表示」には該当しないと判断しました。