「When 完璧なタイミングを科学する」(ダニエル・ピンク)-読書
「When to」
直訳すると「いつ~すべきか?」ですが、これに対する日本人の回答は9割がた
「今でしょ!」になると思いますが、この「いつすべきか?」というテーマについて科学的に考察しているのが、本書「When 完璧なタイミングを科学する」です。フリーエージェント社会の到来やモチベーション3.0などの著者のダニエル・ピンク氏の新刊です。監訳は勝間和代氏。
ここ最近読んだ本の中で一番のあたり本です。ダニエル・ピンク氏の本は外れはないのですが、本書も例外なくいい本でした。
本書は全7章の構成ですが、1日の朝・昼・晩のパターンとタイミングについて記載されている第1章を一部紹介します。
第1章目次
第1章 日常生活──朝・昼・晩のパターンと完璧なタイミング 「大陸も時差も関係なく、潮の満ち引きが規則的にくり返されるように、1日における変動──ピーク、谷、回復──は同じだった」
朝一番の収支報告書がポジティブな理由
「論理的判断」はランチタイムまでに
集中力が落ちる午後は「ひらめき」の時間
やや朝に強い「第3の鳥型」が組織のマジョリティ
ピークを見極めて生産性を
人の一日のリズムのパターン(クロノタイプ)は朝型、中間型(やや朝型)、夜型に分類でき、ほとんどの人は中間型に分類されるそうです。
中間型の人たちは、午前中にポジティブな状態や分析力がピークにきて午後以降急激に落ち込みます(谷の時間帯)。そして、夕方以降ポジティブな状態が回復します。午後以降は分析的な作業は向いていませんが、ひらめき系の洞察的作業に向いています。
このピーク、谷、回復のタイミングに合わせてするべき作業を選択することが生産性の向上につながります。
例えばクロノタイプが中間型で弁護士の私の場合は、午前中に人を説得する交渉や、精緻な書面の作成、経営の意思決定をし、夕方以降に煮詰まっている案件やブレインストーミングをするのがよいようです。なお、谷の時間帯に向いている作業はないようです。
部下をマネージメントする際も部下のクロノタイプを把握して、作業を割り当てることにより生産性の向上が期待できます。
第2章以降も興味深い考察がたくさん載っています。何度も繰り返し読みたい本です。
田端信太郎著「ブランド人になれ!会社の奴隷解放宣言」(幻冬舎)
ツイッターで人気の田端さんの「ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言」売れているみたいなので買って読んでみました。速い人なら10分くらいでサクッと読めます。
タイトルに見覚えがある人も多いと思いますが、「トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ!」と同タイトルです。こちらはもう20年近く前に発売されたロングセラーですが、個人のビジネス力の鍛え方について現代を読み当てていて今でも参考になります。
本書のあとがきでもトム・ピーターズの方の「ブランド人になれ!」について言及されており、本書はトム・ピーターズの本からインスパイアされたものだそうです。
田端さんらしくツイッターのことがよく書かれているのですが、「相手に面と向かって言えないことはツイートしない」「泣き言をツイートするな」等とわりとまっとうなことが書かれていました。
上司と飲みに行ってストレスを貯めるくらいなら、その時間でこの本を読んでみてもいいかもしれません。
田端さんの個人的なエピソードも面白いのですが、私は「第1章 君は誰を笑顔にしたか?」が好きです。
君の仕事の本当のお客様は誰なのか?他人や社会とどのような関わりをもっているのか。どうすれば、君の仕事がお客様とその集合体としての社会を盛りたてることができるのか。大義や志はそこにあるのか?
夜寝る前に、「今日1日の自分の仕事は、誰を喜ばせたのか?誰の役に立ったのか?誰から感謝されたのか?」
本書を読み始めるにあたり、まずはそこから考え始めてみてほしいのだ。
ブランド人への道は、お客様とともに歩むものだ。
出典:本書21頁より
私の尊敬している元上司もよく同じようなことを言っていました。本書全体を読んでも田端さんはサービス精神が豊富な人なんだと思います。
脳のワーキングメモリとゴルフの上達
ゴルフをかれこれ2年以上続けてきました。これまで練習場ではそこそこ打てるのに、コースではミスショットを連発するなど、なかなか上達はしなかったのですが、ここ最近上達の波が来ているような気がします。
この上達の要因は今の先生との相性の良さなのかなと思います。レッスンのときでも、その先生の前だと調子が良くなります。
で、この相性の良さはどこから来るのだろうと考えると、先生があれこれ言わないことに尽きるのかなと思います。マンツーマンレッスンなのですが、今の先生は「これはレッスンなのか?」と思うくらいほとんど何も言いません。せいぜいワンポイント指導してくれるくらいで一人で黙々と打ってる時間がほとんどです。
この何も言わないレッスンは、以前読んだ「脳のワーキングメモリを鍛える! 情報を選ぶ・つなぐ・活用する」によれば実は合理的な教え方のようです。
スイングの一連の動きを学習する際は、脳は次の順序で指令を出します。
前頭前皮質(ワーキングメモリ)→小脳→運動皮質
この流れの中で1か所でもエラーが生じるとミスショットになります。
この3つのうち、コーチの指示を処理するのがワーキングメモリです。「アドレスは正しいか」「グリップは正しいか」「トップの位置は正しいか」「ボールを見る位置は正しいか」等チェックする事項が多くなると、ワーキングメモリにかかる負荷が多くなり、身体の動きやバランスを調整している脳の領域が正常に働かなくなります。
初心者がベテランゴルファーに隣であれこれ言われると必ずといっていいほどミスをしますが、これにはこの脳の動きが関係しているようです。
スイングを覚える際は、ワーキングメモリを使わずに小脳→運動皮質だけのループで覚えるのが効果的なようです。いわゆる身体に覚えさせる状態です。
小脳・運動皮質ループにより解放されたワーキングメモリはイレギュラーな事態やプレッシャーのかかる状況に対応する際に活躍します。
パター練習を用いた実験でも、プロからの詳しい指示を与え、ワーキングメモリをフル活用してパターを練習した人たちと指示を与えずワーキングメモリを解放してパターを練習した人たちとでは、後者の方がプレッシャーに強くなるという結果が出ているようです。
私の上達がこれまで遅かったのも、ワーキングメモリをスイングそのものに割り振りすぎていて、コースの芝や傾斜などのイレギュラー要素やプレッシャーに割り当てるためのワーキングメモリが残っておらず、エラーが多発していたのかなぁと思います。
コピーライターの仕事は競合を調べることから始まる-「ここらで広告コピーの本当の話をします。」(宣伝会議)
目の前にペットボトルに入った水があったとします。この水を売るための広告コピーを考えるには何から始めますか。
広告コピーを考えるには、まず、その商品の具体的な情報や競合送品との違い、すなわちUSP(競合優位性)を調べることが必要です。
このような内容について詳しく書かれているのがこちらの本。ツイッター上で評判でkindle読み放題で読めたので読んでみました。コピーライターの仕事がよくわかります。
広告コピーの仕事では、まずはじめに商品を知ることが必要になります。ここで知るべきなのは商品の競合優位性です。私がこのブログを書くのに使っているLet's note(ノートPC)だったら、「頑丈」「ハイスペック」「長時間駆動」といった情報ですね。
このとき注意するのは、カテゴリーではなく具体的な商品でコピーを書かなければならないということです。さきほどの例でいったらノートPCがカテゴリーで、Let's noteが商品です。
競合優位性がわかったら、次にターゲットを定めます。誰がこの商品を買ってくれる可能性があるかということですね。Let's noteであればPCを持ち運ぶことが多いビジネスパーソンがターゲットになるでしょう。
広告コピーのツボは競合優位性とターゲットです。これは広告コピーだけでなく、製品戦略を考える上でも重要です。
この本は、コピーライターを目指している人だけでなく、製品戦略等の立案担当者にもおすすめです。
リモートワークの参考本「強いチームはオフィスを捨てる」
リモートワークの参考本といえば「強いチームはオフィスは捨てる」があります。
著者はbasecampの創業者のジェイソン・フィリード氏。同氏の書籍では小さなチーム、大きな仕事が著名です。
強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」
- 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,高橋璃子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/01/24
- メディア: 単行本
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企業の顧問弁護士や顧問税理士は企業の法務部や経理部のリモートワーカーのようなもので、既に会社の重要な業務がオフィスの外で行われているのに、どうして従業員をオフィスにとどめる必要があるのかという趣旨の主張が本書ではなされています。
本書によるとリモートワークが向いている業種は、次のとおりです。
経理/会計、金融、広告、コンサルティング、カスタマーサービス、保険、デザイン、ハードウェア、映画製作、行政、法律、マーケティング、人材紹介、ソフトウェア
企業にとってのリモートワークのメリットとしては、事業運営コストの削減、業務の効率化、人材の確保等があげられます。人手不足の昨今、人材の確保を経営課題としている企業においては、リモートワークの導入も検討の余地があります。
本書ではリモートワーク時代の人材採用・マネジメントについても言及がなされており、特に、リモートワーカーこそ人柄が重要であることが強調されています。距離感があるからこそ、良質なコミュニケーションが不可欠となるからです。具体的な内容は本書で確認してください。
ところで、リモートワーク制度を導入する場合は、リモートワーカーにも通常の従業員同様労基法等の規制がかかることに留意が必要です(請負等の労働者性が否定される外注は別)。特に労働時間の管理や作業環境の整備、費用負担等、リモートワーク特有の事象への対応が必要になります。
この点についてはは厚労省のガイドライン等が参考になります。