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解除条項の民法改正対応-民法改正の契約書チェック

この記事では、解除に関する民法改正の内容と契約書の見直しのポイントを解説しています。

目次

債権者に帰責事由がある場合の解除権の制限

改正民法の定め

改正民法では、債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は解除をすることができないとされました(改正民法543条)。

これは、債務不履行が債権者の責めに帰すべき事由によって生じた場合は、債務不履行のリスクは債権者が負担すべきであるからです。改正民法543条は危険負担に関する536条2項と同じ趣旨に出たものです。

たとえば、売買契約済みの売主の中古車を引渡し前に買主の不注意で壊してしまったような場合は、買主は売買契約を債務不履行により解除することはできず、売主は代金を請求することができます。

契約書の見直し

改正民法適用の契約書では、解除する側に帰責事由がある場合の扱いについて規定しておくことが望まれます。

改正民法の原則どおり、解除事由がある場合でも、解除する側に帰責事由がある場合は解除を認めないとするのであれば、それに関する規定をおかないか、改正民法543条と同様の規定を解除の条項に規定しておくことになります。

解除について、解除する側の帰責事由の有無を問題としない構成にするには、解除権を定める条項に「解除権者の責めに帰すべき事由の有無にかかわらず・・・解除することができる」といった修正をすることになります。

催告解除における不履行が軽微なときの例外

改正民法の定め

改正民法では催告解除において、催告後相当期間が経過しても、その期間を経過したときにおける債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして「軽微」であるときは、債権者は解除をすることができないと定められました(改正民法541条ただし書)。

改正前民法においても、判例により債務の不履行が軽微であるときは解除が制限されていました(最判昭36年11月21日等)

契約書の見直し

この改正に対する特別案対応は特に不要と考えられます。

無催告解除事由の追加

改正民法の定め

改正民法では無催告が認められる事由として次の事由が追加されました(改正民法542条1項)。

  • 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確にしたとき(同項2号)
  • 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示し、残存する部分のみでは契約目的が達成できない場合(同項3号)
  • 債務者がその債務を履行せず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき

契約書の見直し

上記事由を意識した無催告解除事由の見直しが必要ですが、大幅に変更することは少ないと考えられます。