名古屋の弁護士のブログ

守秘義務に反しないよう、受任事件とは関係ないことについて雑記するブログです。

存続条項の意義ー契約書のリーガルチェック

契約書の条項のなかに存続条項(残存条項)といった条項が入っていることがあります。

例えば以下のような感じです。

第〇条、第〇条、第〇条の規定は、本契約終了後も有効に存続する。

存続条項で挙げられている第〇条の内容は、契約書によって様々ですが、秘密保持に関する規定、損害賠償に関する規定、競業避止に関する規定、合意管轄に関する規定等が入ってることが多いです。

下手すると、ほとんどすべての条項が入っているものもみかけます。逆にそもそも存続条項がない契約書も多数あります。

では、例えば合意管轄の規定が存続条項に入っていなければ、契約終了後合意管轄の条項の効力がなくなるのかというと、少なくとも日本の裁判所においては契約終了後も合意管轄の定めは有効に残っていると判断されています。*1

損害賠償に関する規定についても、基本的には存続条項の有無にかかわらず存続するものと判断されています。*2

ですので、契約終了後も有効に残ると通常考えられる規定にまで存続条項を規定するのは、理論的に必要というよりは、あらためて効力が残ることを確認することや、相手方からの契約が終了しているのだからこの規定は無効だという主張を未然に防ぐための意味合いになります。

他方で、秘密保持や競業避止などについては、特別に定めておかないと基本的には契約終了後は義務は存続しないと考えられます。このような義務を定める条項については、存続条項に定めておくことが有効です。あえて存続条項という条項を設けなくても、各条項に定めておくことも可能ですし、そちらの方がわかりやすい場合も多いでしょう。

実務上存続条項の厄介な点は、引用する条数のミスがおきがちな点です。特に相手との契約書の修正を繰り返していると条項がずれたりするので、間違いがないか十分チェックする必要があります。

*1:大阪地判平成17年12月8日は、原告からの「確かに、本件契約の合意解除により、本件契約による上記管轄合意の効力が失われるとは解されない」としている。

*2:東京高判平成25年9月26日は「被控訴人は,個別契約を全て解除したから,責任限定条項は適用されないなどと主張する。しかし,本件最終合意書4条の責任限定条項は,被控訴人が控訴人の責に帰すべき事由に基づいて救済を求める場合について律する定めであり,請求原因を問わず不法行為責任にも適用されることになっており,その約定の趣旨に照らすと,被控訴人が,控訴人に対し,債務不履行に基づく損害賠償を請求するに当たり,個別契約の解除を選択することによって,責任限定条項の適用を外すものでないことは明らかであるというべきである。被控訴人の主張は採用することができない。」としている。