名古屋の弁護士のブログ

守秘義務に反しないよう、受任事件とは関係ないことについて雑記するブログです。

マスクの転売規制、3月15日からスタート

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今、私の家の近所ではマスクやトイレットペーパー全然売っていません。家の在庫もマスクが約40枚、トイレットペーパーが3ロールと非常に心もとない状況です。

そんな中、本日、「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。

この政令により3月15日よりマスクの転売行為が規制されます。具体的に規制される行為は次の要件をみたす行為です。簡潔にいうと、「買った価格よりも高い価格でマスクを売ってはだめ」ということです。

  1. 衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から
  2. 衛生マスクの購入をした者が
  3. 当該購入をした衛生マスクを
  4. 不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスクの売買契約の締結の申込み又は誘引をして
  5. 当該衛生マスクの購入価格を超える価格で販売する行為

この規制、罰則もあり、違反者には1年以下の懲役や100万円以下の罰金が科せられます。

政令の条文は以下のとおり。

政令

(衛星マスクの転売の禁止)

第二条 衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から衛生マスクの購入をした者は、当該購入をした衛生マスクの譲渡(不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスクの売買契約の締結の申込み又は誘引をして行うものであつて、当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)をしてはならない。


(罰則)
第七条 第二条の規定に違反した場合には、当該違反行為をした者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の罰金刑を科する。

速やかにマスクが必要な人にいきわたることを願います。

以上、コロナウイルス関連の規制情報のお知らせでした。

瑕疵担保責任から契約不適合責任への改正への対応ー民法改正の契約書チェック

2020年4月1日の改正民法施行によって、現行の瑕疵担保責任が契約不適合責任へ置き換えられます。それに伴い、同日から締結される予定の契約書も改正民法を想定した内容にすることが必要になります。

この記事では、瑕疵担保責任から契約不適合責任への改正の概要と契約書における対応について簡単に解説しています。

目次

契約不適合責任に関する主な改正点

瑕疵担保責任から契約不適合責任への置き換えについて、売買契約や請負契約の要素のある契約書において対応が必要になってきます。

まず、改正民法による契約不適合責任に関する主な改正点はつぎのとおりです。

瑕疵から契約不適合へ

改正民法では売主(請負人)の責任の要件が「瑕疵」から「契約の内容に適合しないとき(契約不適合)」に置き換えられることになります。改正民法上も「瑕疵」という用語は消えるので、契約書においても用語を瑕疵から契約不適合に置き換えていく必要があります。

追完請求権の新設

改正民法では、契約不適合がある場合、追完請求権があらたに認められることになりました(改正民法562条)。

追完請求権は、引き渡された物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものである場合に、買主が売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができるというものです。

代金減額請求権の新設

改正民法では、一定の要件が認められる場合に、契約不適合の程度に応じて買主に代金の減額請求権をあらたに認めました(改正民法563条)。

期間制限の変更

現行民法の瑕疵担保責任では、買主は、瑕疵を知ったときから1年以内に解除又は損害賠償の請求をしなければならないとされています(現行民法570条、566条3項)。

これに対して、改正民法では、1年間の期間制限は種類又は品質に関する契約不適合の場合に限られます(改正民法566条)。すなわち数量についての契約不適合責任には1年間の期間制限は及びません。

また、改正民法では、買主は、不適合を知ったときから1年以内に、不適合があることを売主に通知すれば足りるとされています。

改正点のまとめ

  現行民法 改正民法
責任の要件 隠れた瑕疵 契約不適合
追完請求権 規定なし 可能(562条)
代金減額請求権 規定なし 催告代金減額請求又は無催告代金減額請求(563条)
期間制限

瑕疵を知った時から1年以内に請求が必要(売買)

 

目的物の引渡し時(仕事の終了時)から1年以内に請求が必要(請負)

種類・品質の不適合を知ったときから1年以内に不適合の通知が必要。ただし、引き渡し時に売主が不適合を知っていた又は重過失により知らなかった場合を除く(566条)
解除 契約した目的を達成することができないときに可能 債務不履行の一般原則にしたがった解除が可能(564条)
損害賠償 売買では信頼利益に限られる 債務不履行の一般原則にしたがった損害賠償請求が可能(564条)

 

契約書における契約不適合責任に関する対応

売買契約書における対応

売買契約、売買契約の要素がある契約書における対応としては、従前の瑕疵担保責任(納品・検査、解除、損害賠償も含む)に関する規定を改定していくことになります。

契約不適合責任も従前の瑕疵担保責任同様任意規定ですので、強行法規(消費者契約法等)に反しない限りは、自由に内容を決めることができます。

従前の契約書においても、追完や減額、期間制限といった内容は規定されているものがほとんどですので、用語の変更以外不要な場合もあります。ただし、規定がない場合は民法どおりの処理となってしまうので、それで不都合がないかを確認する必要があります。

以下では売買契約を想定した規定例を示します。

規定例

第〇条(契約不適合責任)

 乙は、第△条の規定による検査において、納品された本商品が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないこと(以下「契約不適合」という。)を発見した場合は、当該商品の受領後◎日以内に、その旨を甲に通知するものとする。

2.前項の場合、乙は、甲に対し、当該商品の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、甲は、乙に不相当な負担を課するものでないときは、乙が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

3.第△条の規定による検査終了後、検査時において直ちに発見できない契約不適合が本商品受領後6か月以内に発見されたときも前項と同様とする。

4.乙は、前各項の規定により、乙の甲に対する損害賠償の請求及び本契約第●条の規定による解除権の行使を妨げられない。

代金減額請求権が認められるのは改正民法上追完の催告をするか、追完が不能な場合などの要件が必要となりますが、契約上、当初から追完と選択的に減額請求を認めることも可能です。

損害賠償については、履行利益(契約に適合した履行がなされたならば買主が得られたであろう利益)の賠償が原則となります。売主としては、賠償の上限を定めるなどの検討が必要です。

請負契約書における対応

請負契約、請負契約の要素がある契約書(一部の業務委託契約書等)における対応も、基本的には売買契約同様、従前の瑕疵担保責任(納品・検査、解除、損害賠償も含む)に関する規定を改定していくことになります。

請負契約の場合、現行の民法では瑕疵担保責任期間について、注文者は目的物の引渡し時(仕事の終了時)から1年以内に請求しなければならないと制限されていますが、改正民法では、契約不適合を知ったときから1年以内に通知すれば足りるとされています(改正民法637条1項)。

そのため現行民法に比べ、改正民法では請負人の責任期間が長く規律されることになったので(注文者が契約不適合を認識しない間は目的物引渡し時から10年、改正民法166条1項2号)、請負人としては、契約書において契約不適合責任期間の制限を設けるなどの対応が重要になってきます。

なお、現行民法では建物その他の土地の工作物については、瑕疵があっても解除できないこととされていましたが、改正民法ではこの制限規定は削除されているので注意が必要です。 

(2020年派遣法改正)労使協定方式の労使協定(イメージ)が更新されました

厚生労働省のサイトで、派遣労働者の同一労働同一賃金の対応について、労使協定方式の労使協定(イメージ)が2020年1月14日、更新されました。

派遣労働者の同一労働同一賃金について

2020年4月1日施行の改正派遣法の施行により、派遣元企業は同一労働同一賃金への対応のため、①派遣先均等・均衡方式、②労使協定方式のいずれかを選択(あるいは併用)して対応をしなければならなくなりました。

派遣先均等・均衡方式は派遣先からの情報提供のハードルが高く、多くの派遣会社は労使協定方式を選択すると予想されます。

労使協定方式において、労使協定で定める事項は以下のとおりです。

①労使協定の対象となる派遣労働者の範囲
②賃金の決定方法(ア及びイに該当するものに限る)
ア  派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上の賃金額であること
イ  派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合に、通勤手当等を除く職務の内容に密接に関連して支払われる賃金が改善されること
③派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等を公正に評価して賃金を決定すること
④「労使協定の対象とならない待遇(派遣先が行う業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練(法第40 条第2項の教育訓練)と給食施設、休憩室及び更衣室(法第40 条第3項の福利厚生施設)及び賃金」を除く待遇の決定方法(派遣元事業主に雇用される通常の労働者(派遣労働者を除く)との間で不合理な相違がないものに限る)
⑤派遣労働者に対して段階的・体系的な教育訓練を実施すること
⑥その他の事項
・有効期間(2年以内が望ましい)
・労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合はその理由
・特段の事情がない限り、1つの労働契約期間中に派遣先の変更を理由として、協定対象となる派遣労働者であるか否かを変えようとしないこと

改正民法に対応した「情報システム・モデル取引・契約書」が公開されました。

IPAが経済産業省が2007年に公開した「情報システム・モデル取引・契約書」の民法改正を踏まえた見直し整理反映版を公開しました。

https://www.ipa.go.jp/ikc/reports/20191224.html

以下の改正の反映がされています。

民法改正(契約不適合責任、請負・準委任契約の報酬請求権)

個人情報保護法の改正

特許法の改正

著作権方の改正

会社法務A2Z、コンプライアンス特集

 会社法務A2Z、2019年12月号はコンプライアンス特集でした。

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特集内容の目次は以下のとおり。

  • 2019年 2つの金融機関の不祥事事例分析
  • 不祥事発覚時の初動対応における勘どころ
  • 企業不祥事のリスクマネジメント
  • 法規制の厳しい業界でのコンプライアンス態勢-貸金業界の場合
  • 伊藤忠商事エネルギー・化学品M&R室でのコンプライアンス体制の定着(後編)
  • 日本版司法取引と外国公務員贈賄防止体制の整備について-「三菱日立パワーシステムズ事件」
会社法務A2Z(エートゥージー) 2019年 12 月号 [雑誌]

会社法務A2Z(エートゥージー) 2019年 12 月号 [雑誌]

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 第一法規
  • 発売日: 2019/11/25
  • メディア: 雑誌