名古屋の弁護士のブログ

守秘義務に反しないよう、受任事件とは関係ないことについて雑記するブログです。

SNSサービスの利用規約に基づく利用停止措置が債務不履行・不法行為にあたらないとされた事例

東京地判平成27年4月8日

【事案の概要】

本件は、原告が、被告運営○○と称するウェブサイトを利用するための会員登録をし、「~~~~~~」の登録メールアドレスにより上記サイト上で提供されるサービスを利用していたところ、被告から上記サービスの利用を停止されたとして、被告に対し、上記登録メールアドレスによる被告発行のアカウントの利用に係るサービス利用契約上の地位にあることの確認及び同契約に基づくサービスの提供を求めるとともに、被告による上記アカウントの利用停止が原告に対する債務不履行及び不法行為に当たるとして、上記利用停止により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料として九九万九四一〇円及び上記アカウントの利用停止中に原告保有の○○ポイント(五六四Kマネー)の利用が不能となり五九〇円の経済的損害が生じたとして、計一〇〇万円及び遅延損害金の支払を求める事案である。

 【判旨】

被告の本件利用規約における本件禁止事項は、前記前提事実記載のとおり、「面識のない異性との出会い等を目的として利用する行為」と定められており、その文言上、男女間の交際を目的とする出会いのみに限定して禁止する定めとは認められない。上記条項の趣旨については、面識のない男女が出会って交際等の関係に至ることが助長されるような投稿を禁ずる点にあると解する余地があるものの、投稿自体から男女間の交際を直接の目的とすることが明らかな行為のみを禁止するのでは、上記の趣旨を実効あらしめることは困難であり、上記行為にとどまらず「面識のない異性との出会い等を目的として利用する行為」を対象とし、これに該当する行為を禁じているものと認められる。

本件は、SNSサービス上で、チケットの売買目的で面識のない異性と連絡を取った行為が禁止事項に該当するとしてサービスの利用停止措置を受けたユーザーがサービス提供会社に大して、アカウントの利用と損害賠償を求めた事案です。

被告のサービス利用規約には次の定めがありました。

ユーザーは、本サービスの利用にあたり、次に掲げる行為を行ってはならないものとします。禁止事項に違反した場合には、強制退会、利用停止、日記等の情報の全部もしくは一部の削除、又は公開範囲の変更等の不利益な措置を採ることがあります(14条)。面識のない異性との出会い等を目的として利用する行為(同条(8))。

弊社は、弊社の都合により、本サービスをいつでも任意の理由で追加、変更、中断、終了することができます(15条)。

登録及び基本サービスは無料とします(16条)。

弊社は、本利用規約又はその他の利用規約等に違反する行為又はそのおそれのある行為が行われたと信じるに足りる相当な理由があると判断した場合には、当該行為を行ったユーザーの強制退会処分、日記等の情報の全部もしくは一部の削除、及び公開範囲の変更等を行う場合がありますが、それによって生じたいかなる損害についても、一切責任を負いません(19条)。

禁止事項である「面識のない異性との出会い等を目的として利用する行為」の解釈については、原告は男女交際を主たる目的とする行為を対象とするべきと主張したのに対し、裁判所は、規定の文言及び規制の趣旨の実効性から「面識のない異性との出会い等を目的として利用する行為」が対象となると判断しました。

その上で、原告の行為が禁止事項に該当すると認定し、本件利用停止措置は、規約に基づくものであり、これをもって債務不履行や不法行為にはあたらないし、原告がアカウントを利用する地位にあるものとも認められないとしました。