名古屋の弁護士のブログ

守秘義務に反しないよう、受任事件とは関係ないことについて雑記するブログです。

退職代行サービスの価値

退職代行サービスがここ1年程度で流行っているようです。サービス提供会社によっては月に数百件の利用があるそうです。

このサービスが流行っていると聞いたとき正直耳を疑いましたが、私自身も似たような依頼を受けたことはあり、なんとなく需要があるのは分かる気がします。

退職代行サービスの内容としては、一般的に次のような流れのようです。

  1. 退職代行業者が会社にサービス利用者が退職する旨を電話で伝える
  2. サービス利用者が退職届、返却物を会社に郵送する

弁護士がサービス提供者の場合は、退職届を内容証明などで弁護士が会社に郵送し、全てのやり取りを代理して行うこともあるようです。

料金は、概ね1万9800円から5万円くらいで、弁護士がサービス提供者の場合は少し料金が高くなり、サービス利用者が正社員ではなくアルバイトのような場合は安くなる傾向があります。

弁護士がサービス提供者の場合は、職務規程などの関係上(委任契約書の作成が義務付けられている等)、ハードルが高くなり、採算をとるためにある程度料金が高止まりすると考えられます。

他方で、一般企業がサービス提供者の場合は、弁護士特有の倫理規制はかかりませんが、弁護士法72条に抵触する可能性が高いとの指摘があります。*1*2

退職代行サービスが流行っているのは、言い出しにくい退職を代わりに伝えてくれるのであれば5万円程度までは安いものだという価値判断があるのだと考えられます。

退職代行業者からの通知を受け取った会社としては、悪質ななりすましのようなケースで従業員の退職の意思表示が無効になるおそれがあるなどの指摘がされていますが、そのようなケースは極めて稀でしょう。 

退職代行が弁護士法72条違反の非弁行為にあたるとしたら、退職代行業者を介した退職の意思表示が無効になるおそれもありますが、退職届自体を労働者が提出しているのであればそれが無効になるおそれは低いでしょうし、退職代行業者を利用した労働者自らが退職の無効を主張するのは信義則に反する可能性があります。

*1:会社法務A2Z2019年05月号「退職代行サービスの問題点と実際に退職代行業者から連絡がきた際の対応」結城優

*2:季刊・労働者の権利「退職代行サービスの法的問題点」塚原英治