名古屋の弁護士のブログ

守秘義務に反しないよう、受任事件とは関係ないことについて雑記するブログです。

共同研究開発契約締結前の秘密保持契約(NDA)の注意点

共同研究開発は、相互に技術やノウハウを補完できることにメリットがあります。そのため、秘密情報等の開示はほぼ必須であり、共同研究開発実施の検討においては秘密保持契約(NDA)が締結されるのが一般的です。

この記事では、共同研究開発を検討するにあたっての秘密保持契約の注意点をまとめています。

目次

コンタミネーションのリスク

コンタミネーション(contamination)とは直訳すると「汚染」であり、他社の情報が自社の情報に混入してしまうことをいいます。

コンタミネーションにより、秘密保持義務、目的外利用の禁止を指摘されるリスクが高まります。

共同研究開発を検討するための秘密保持契約では特にこのコンタミネーションのリスクを意識する必要があります。

目的条項

秘密保持契約では、秘密情報の目的外利用の禁止を定めるのが通常です。

目的の範囲と目的外利用の禁止は対応した関係になります。そのため、目的の範囲が狭いほど秘密情報の受領側の制約が厳しくなりますし、目的の範囲が広ければ受領側の自由度は上がります。

秘密情報の定義

秘密保持契約上の秘密情報の定義は、(文書、口頭、電磁的記録媒体等、開示方法・媒体を問わず)開示側から開示された情報の一切などと広くとっているものが多くみられます。

コンタミネーションのリスクの低減のためには、「秘密」や「㊙」等のマークにより秘密情報であることの明示がなされ開示されたものを秘密情報として狭く定義することも効果的です。口頭で開示されたものについては、速やかに書面で秘密情報の内容を報告するなどの処理をすることになります。

もっとも、秘密情報の定義を狭くすることは、自社の保護したい情報が秘密情報の範囲から漏れるリスクも出てくるので、開示する秘密情報について上記のような運用を実施できるか慎重な検討が必要です。

本契約への移行と秘密保持契約

検討の結果、共同研究開発契約(本契約)が締結される場合、本契約の中でも秘密保持義務が通常合意されるので、本契約前の秘密保持契約との関係が問題となります。

この場合は、本契約において従前の秘密保持契約は終了させて、その内容を本契約の秘密保持条項に取り込むか、従前の秘密保持契約は引き続き維持して、本契約の秘密保持条項を別途規定する方法があります。

従前の秘密保持契約を残しておく場合は、本契約の秘密保持条項との優先関係等を規定しておく必要があります。