名古屋の弁護士のブログ

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合意管轄条項のリーガルチェック

合意管轄条項のリーガルチェックの解説です。契約書では一番後ろの方によく定められていますね。

合意管轄条項の基本的な考え方

合意管轄条項は、その契約について裁判が必要になった場合、どこの裁判所を使うのかをあらかじめ当事者間で合意する規定です。

合意管轄条項を自社に有利にしたい場合は、自社の近くの裁判所にしておきたいというのが当然な思考です。実際、国際取引を除いては*1、基本的には自社の本店所在地を管轄する地方裁判所(または簡易裁判所)を専属的合意管轄裁判所と定めておくのが無難です。

条項例

第 条(合意管轄)

本契約について訴訟の必要が生じた場合には、甲の本店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

合意管轄の種類

合意管轄には、付加的合意と専属的合意の2種類があります。

付加的合意は、通常の裁判管轄に、当事者が合意した裁判所を追加で定めるイメージです。付加的合意の場合は、付加的合意で定められた管轄裁判所のほかに、通常の管轄が認められる裁判所を使うこともできます。

専属的合意は、使える裁判所を特定の裁判所だけに限定する合意です。契約書の管轄条項で定められているのは、一般的には専属的合意管轄裁判所です。

通常の管轄が、名古屋地裁と東京地裁の場合、裁判は自社の近くの名古屋地裁で行われるようにしたい場合は、名古屋地裁を専属的合意管轄裁判所とするようにします。

契約書では、合意の意味が付加的合意か専属的合意かが紛らわしくならないように、専属的合意であることを明確に定めておくべきです。

細かな言葉遣いの問題ですが、ときどき「専属管轄裁判所」と書かれている契約書もみかけますが、専属管轄裁判所は法律で定められている別個の概念ですので、「専属的合意管轄裁判所」の合意をつけ忘れないようにしましょう。

合意管轄条項の契約交渉

合意管轄条項は契約のイニシアチブを取っている側に有利に定められているケースが多いです。相手方から契約書案を提示された場合は基本は相手方有利に定められていますので、まずチェックする必要があります。

合意管轄条項は、契約交渉の中で最終的には契約当事者の力関係で決まることが多いですが、力関係が対等な場合で両者譲らない場合は、原告(または被告)となる者の本店所在地を管轄する裁判所を合意管轄裁判所とすること(いわゆるクロスボーダー条項)やあえて合意管轄条項を定めないことで調整されます。

クロスボーダー条項を採用する場合は、契約の内容上、自社が原告、被告いずれになる可能性が高いかを判断して、条項の交渉をする必要があります。

*1:国際取引の場合、A国で得た判決をB国で執行できるかという問題が生じます。そのため、合意管轄を定めるにあたっては執行可能性等を検討する必要があります。