名古屋の弁護士のブログ

守秘義務に反しないよう、受任事件とは関係ないことについて雑記するブログです。

コインチェック社の買収に用いられたアーンアウト条項とは?

NEMの巨額流出や金融庁からの業務改善命令等を受け経営の立て直しを迫られていたコインチェック社がマネックスグループに36億円で買収されると発表されました。

買収額36億円は安いと思う人も多かったのではないでしょうか。

買収額が低いのではという記者からの質問に対し、マネックスグループの松本社長はアーンアウトを採用した旨発表しています。

「買収金額につきましては、最後におっしゃられたようななにか特別な大きなリスクが潜んでいるとは考えておりません。我々も短い時間でしたけれども、いわゆるデューデリジェンスをした中でそれが限定的であることは確認しております。
ただし今後のコインチェックさんを考えると、しっかり業登録を目指していくわけですけれども、業登録がされて今後も事業を続けていけるのかということと、続けていけない場合には利益が出なくなるわけですけれども。
一方で、続けていける場合には当然大きな利益をあげていくことができるということで、株式の買い手と売り手の間で見方に大きな差が発生します。
そのような中で、欧米等ではよく使われるアーンアウトと呼ばれる、将来の利益の部分をもともとの株主にあとでお支払いするという、そういうかたちで今申し上げたような認識にギャップが当然あり得る状況を解決して先へ進んだかたちであり。
その結果、見た目の数字につきましては小さめに見えるというかたちでありまして、それはリスクがとんでもなく大きいとか、あるいはコインチェックさんの収益・利益力が小さいということでは決してないとご説明をしたいと思います。」

マネックス、コインチェックを買収 共同記者会見全文2 - ログミー

アーンアウト条項とは、特定の条件が成就した場合に買主から売主に追加の対価の支払を義務付ける条項です。例えば、株式売却後3年間で買収対象会社の利益が一定額を超えた場合には、利益の一部を支払うといったものがあります。

アーンアウト条項は、買収される企業の評価額に買主と売主で合意がつかない場合に用いられることで、M&Aの実施がしやすくなる機能を有します。買主としては利益が確定してから対価を後払いでき、売主としては不当に買いたたかれずにすみます。

プロスポーツ選手の年俸でいうところの出来高部分のようなイメージです。

アーンアウト条項は、海外のM&Aでは多数使用例がみられますが、国内ではこれまであまり例がありません。クロスボーダー案件ではDeNA社が米国ngmoco社の買収の際に使用しています*1