名古屋の弁護士のブログ

守秘義務に反しないよう、受任事件とは関係ないことについて雑記するブログです。

開発したプログラムの著作権の帰属先

問題です。

A社は顧客管理システムの開発を,情報システム子会社であるB社に委託し,B社は要件定義を行った上で,設計・プログラミング・テストまでを協力会社であるC社に委託した。C社では優秀なD社員にその作業を担当させた。このとき,開発したプログラムの著作権はどこに帰属するか。ここで,関係者の間には,著作権の帰属に関する特段の取決めはないものとする。

(出典)基本情報技術者試験平成22年春期午前第78問

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正解は「C社」です。

開発したプログラム(成果物)の著作権は、当該成果物の著作者に帰属します。

本問では、プログラムを開発したのはC社のD社員ですが、本件プログラムはC社の職務上作成されたものなので、D社員ではなくC社に著作権が帰属します(著作権法15条2項)。

委託者はプログラム作成の委託料を支払ったからといって、著作権まで取得するものではありません。

もっとも、さきほどの問題文の注意書きにあるように、著作権の帰属に関する特段の取決めがある場合は話が別です。契約によって著作権を移転することは可能だからです(著作権法61条)。

プログラムの著作権を委託者に帰属させたい場合は、著作権の移転を契約書に明記しておく必要があります。

以下の条項は、経済産業省のモデル契約書の条項案をベースとした条項です。*1

汎用的な利用が可能なプログラムの著作権等は受託者(ベンダ)に残し、それ以外を委託者(ユーザ)に帰属させる内容になっています。

第○条 納入物に関する著作権(著作権法第27 条及び第28 条の権利を含む。以下同じ。)は、乙又は第三者が従前から保有していた著作物の著作権及び汎用的な利用が可能なプログラムの著作権を除き、甲より乙へ当該個別契約に係る委託料が完済されたときに、乙から甲へ移転する。なお、かかる乙から甲への著作権移転の対価は、委託料に含まれるものとする。
2. 甲は、著作権法第47 条の3に従って、前項により乙に著作権が留保された著作物につき、本件ソフトウェアを自己利用するために必要な範囲で、複製、翻案することができるものとし、乙は、かかる利用について著作者人格権を行使しないものとする。

この条項を利用する場合は、「汎用的な利用が可能なプログラム」とは何を指すのかを別途明確にしておくのが望ましいでしょう。

*1:法改正による修正、本件検討に不要な部分の削除等の修正をしています。