名古屋の弁護士のブログ

守秘義務に反しないよう、受任事件とは関係ないことについて雑記するブログです。

副業(兼業)禁止の有効性

副業を理由とした解雇の事案がニュースとなっています。

www.nikkei.com

新たな厚労省のモデル就業規則では副業を認める規定が盛り込まれ、ユニ・チャームや新生銀行等が副業解禁のプレスリリースをしている状況では、こういった流れに逆行する解雇はどうしても話題性が出てしまいます。

とはいえ、未だ副業禁止規定(許可制を含む)を置いており、原則副業を禁止する運用をしている企業が大多数だと思います。

会社による副業禁止の可否に関する裁判例の考え方としては、当該副業により、労務の提供に支障が生じる場合、企業秘密の漏えい等により企業秩序を乱す事態が生じる場合等には副業を禁止することは可能であると考えられています*1*2

逆にいうとそのような事情がない副業の禁止は、例え就業規則により規定されていたとしても無効となる可能性が高いです。副業の増加状況等の社会情勢の変化を踏まえると、今後副業禁止が有効となる範囲はますます限定されるようになると予想されます。

副業禁止規定が問題となる場面としては、(1)労働者からの副業申請が不許可とされた場合、(2)副業を理由とする処分(解雇・懲戒等)がなされた場合等が考えられます。

(1)の事例では、副業を許可すべき場合にもかかわらず許可しなかったことについて会社の不法行為責任が認められ、会社に30万円の慰謝料の支払を命じられたものがあります。*3

*1:代表的な先例である小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日)は「従業員の兼業の許否について、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮したうえでの会社の承諾にかからしめる旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがた」いとして許可制の副業禁止規定を有効であるとしました。

*2:マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)は「労働者が兼業することによって,労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり,使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり得るから,このような場合においてのみ,例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許されるものと解するのが相当である」としており、副業を禁止することは例外的に許されるものとしてます。

*3:前掲マンナ運輸事件